鏡の世界 〜the world on the other side of the mirror〜


<The Imaginarium of Doctor Parnassus>

週末、テリー・ギリアム監督の映画「Dr.パルナサスの鏡」を観に行き
ました。これは前々から楽しみにしていた作品です。

We went to the movie ” The Imaginarium of Doctor Parnassus ”
last weekend.

「鏡」というのは子供の頃の私にとっては正にワンダーランドでした。
というのも、母が三面鏡というのをもっていたからです。
4歳年が離れている弟が生まれるまでは私は少しの間は一人っ子でした。
三面鏡はその頃の私の恰好の一人遊び場だったのです。私のお気に入りの
遊び方は限りなく鏡の蓋を閉めて、わずかに私の顔だけを鏡の中にいれて
のぞきこむという方法で、自分だけがいる鏡の果てのない世界を創り
あげることでした。その中に自分じゃない誰かがいるんじゃないか、とか
花でもさいたりしないかな、とか怖いというよりもむしろわくわく
しながらその世界に浸るのです。「顔だけ」入れるのにあきると
今度はもっと鏡をしめて「片目」だけいれたりもしてみます。
へんてこな顔をした生き物がたくさん鏡の中に出現します。でも
その生き物は自分の意のままに動くのです。さらに目を半分にしたり
鼻までだしてみたり、片手をそっとそえてみたり・・
「顔半分」の生き物というのもまた愉快でした。
鏡の中の世界は想像力をかき立てる心ときめく異空間でした。

As a child, the world on the other side of the mirror was
an intriguing play area for me, Because my mother had
a triple mirror. Often I closed a lid of the mirror as much
as possible, and put only my head in there.
And I enjoyed the infinite world I only inhabited.
Sometimes, I tried to put only “one eye ” and
” half of my face “. I looked for a stranger in the mirror.
It was a magical another dimension to stir my imagination
inside mirror.


<This is a recent mirror photo.
Can you find me?>

ギリアム監督の「Dr.パルナサス博士の鏡」はそんな幼少期の「夢想」
をそのまま形にしてくれたような作品なのでした。

In the movie ” The Imaginarium of Doctor Parnassus “,
Terence Vance Gilliam made an image real of my
childhood dream.
I love this movie’s costume designs and visual arts.

映画は現代のロンドンが舞台。街に現れる馬車にひかれる旅一座。
Dr.パルナサス博士の鏡へと誘う道化師の口上が始まります。
博士の鏡の中に入れば、客は己の願望の世界を具現化して体験できます。
ギリアム監督の作り出す「願望」の世界は単に幻想的に美しいわけでは
なくシュールでコミカル。毒気も満載です。そして光に影があるように
「願望」の世界にはかならず悪魔が作り出す「欲望」の世界が出現し
ます。どちらを選ぶのか・・客は結果的に己の魂を試されることに
なるのです。

一座の舞台装置はまるでシェイクスピアの時代から使われ続けている
としか思えない「いにしえ」の匂いのする時間を内包してる趣ある作り
です。装置にあしらわれている舞台美術も中世の絵画のように美しく、
一座の衣装はあらゆる文化を取り入れた・・そう何風とは言い表せない
(ジプシー風で、エスニック風で、ゴチック風で、ジャポニズム風で ・・)
けれどすごくセンスある素敵な服装。毎回変わるこの衣装や彼らの私服
がもれなく感嘆のセンスでこれを眺めているだでも十分楽しいという
気持ちにさせられました。
あえていうなら、その後の鏡の中の世界感も併せて「ギリアム風」なの
でしょう。美術センスが半端でなくすばらしい!
とのっけからギリアムワールドに引き込まれました。

一座に拾われる「謎の青年トニー」役のヒース・レジャーもはまり役です。
そして「鏡の外」の世界の撮影後急死してしまったヒースの代わりに出演
したジョニー・デップ、コリン・ファレル、ジュード・ロウがそれれぞれ
「鏡の中」のトニーを演じ上げます。鏡の中のトニーは姿が変わるという
設定変更にしたことによってこの変化は違和感なく、ヒースのためにも
映画を完成させたいと願う3人の友とギリアム監督の気持ちが結果として
良い化学変化を映画にもたらしたのでした。マジカル。
ワンダーランド的なこの映画のに於いて映像が魅惑的であることはかかせ
ません。オフィシャルHPでその雰囲気はつかめるかと。
鏡の中の世界もちょっとづつだけど観られます。

http://www.parnassus.jp/index.html
We can enjoy a little Gilliam world on the official site.

その他配役も光っていて、悪魔役にはなんとトム・ウェイツ!あの声で
悪魔の言葉を歌うようにささやくのですから、、、そして博士の聡明な
片腕役の小人にはオースティンパワーズのミニ・ミー(役名です)。
博士の美しい一人娘にはスーパーモデルのリリー・コール。この方の
9頭身とも10頭身とも言われるこの世のものとは思われぬ容姿が
ギリアムの幻想的な衣装と世界にぴったりはまってました。
やっぱりね・・ここで6頭身じゃなんだか一気に現実感満載な感じに
なりますよね・・幻想と神秘の世界には非現実的な容姿じゃないと。

CGの駆使もこういうことなら大歓迎です。
ギリアムのイメージする芸術的センスに感服いたしました。礼。

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